金属粉末から生まれる複雑形状の部品製造
パウダーベッド方式という積層造形技術を軸に、株式会社J・3Dは切削や鋳造では形にできなかった部品を金属3Dプリンターで造形している。EOS社製のEOSINT M280を3台、EOS M290を1台稼働させ、マルエージング鋼やインコネル718相当材、アルミニウム合金、純チタン、ステンレス合金といった金属材料を扱う。内部に冷却チャンネルを組み込んだ金型や、軽量かつ高強度を求められる構造部品など、設計の自由度が従来工法とはまるで異なる。レーザーで金属粉末を溶融・凝固させる工程を層ごとに繰り返し、三次元の形状を積み上げていく仕組みだ。
リバースエンジニアリングによって既存部品を3Dデータ化し、そこから造形まで一気通貫で進められる点は、開発スケジュールを圧縮したい企業から重宝されているという声が目立つ。材料ごとの造形パラメーターを独自に開発しており、密度・強度・表面粗さを要求仕様に合わせて追い込んでいく。こうした条件出しのノウハウは一朝一夕で蓄積できるものではなく、2013年の設立以降、案件を重ねるなかで磨かれてきた。個人的には、この「条件最適化」に対する執念のような姿勢が同社の根幹だと感じた。
航空宇宙から医療機器まで広がる適用領域
ジェットエンジンの噴射ノズルやタービンブレード、ロケットエンジン部品の造形を手がけていると聞けば、求められる精度と信頼性の水準が想像できる。航空宇宙分野では内部構造が複雑な部品が多く、金属3Dプリンターの特性が活きる領域だ。自動車産業向けには試作部品や小ロット品の製造を請け負い、開発サイクルの短縮に寄与している。一般産業機器の特殊形状パーツにも対応しており、業界ごとの品質規格を踏まえた造形条件の設定が蓄積されてきた。
医療分野での取り組みは2014年に始まり、患者ごとの骨格形状に合わせたカスタムメイドの人工股関節用寛骨臼を開発してきた実績がある。量産品では対応しきれない個別適合型の医療機器を、積層造形で一品ずつ製造するというアプローチだ。こうした症例対応型のものづくりは今後さらに需要が伸びると見られており、株式会社J・3Dが早い段階から実績を積んでいる事実は見逃せない。
造形前後の工程まで自社設備でカバーする一貫体制
ATOS II TRIPLE SCANで三次元データを取得するところから、造形後の電解研磨・ブラスト・バレル研磨、さらにワイヤーカットやフライスによる精密仕上げ、電気炉での熱処理まで、金属部品製造に必要な工程を社内に揃えている。GPAINNOVA社製の電解研磨装置Dlyte110iを導入し、造形品の表面品質を製品レベルまで引き上げる後処理にも対応。キーエンス社製ハンディープローブ三次元測定器による寸法検査で設計値との整合を確認する流れだ。設計データの受け取りから最終検査までを一社に預けられるため、工程間の品質ブレが起きにくい。
金属3Dプリンターの導入を検討している企業に向けては、工場見学や技術相談を通じたコンサルティングも実施している。「実機を見て初めて活用イメージが湧いた」と感じる来訪者も多いようだ。樹脂3Dプリンターや鋼材フライス加工のサービスも並行して提供しており、金属造形以外の加工ニーズにも対処できる。
少数精鋭の機動力と技術普及への取り組み
名古屋市港区に拠点を置き、あおなみ線荒子川公園駅から徒歩15分の場所で稼働している。6名という少数精鋭の体制だからこそ、納期の前倒し要請や仕様変更への対応が速い。三菱UFJ銀行・十六銀行・りそな銀行との取引関係を維持しながら、設備投資を継続的に進めてきた経緯がある。小所帯でありながら機器の更新や新材料への対応を怠らない運営スタイルは、資金面の安定あってこそだろう。
セミナーや講演を通じた情報発信にも力を入れており、金属3Dプリンターの基礎知識や専門用語の解説を積極的に公開している。過去の適用事例を具体的に紹介することで、導入前の不安を減らし活用の筋道を示す取り組みだ。「事例を見て相談に踏み切れた」という声は少なくないらしく、技術の裾野を広げる活動が新たな案件獲得にもつながっている。


