三代にわたる工務店が持つ設計事務所併設の意味
佐久市で三代続く髙野建築は、設計事務所を自社内に構えている。設計士と職人が同じ屋根の下で動くことで、図面の意図が現場へダイレクトに届き、施主との打ち合わせ内容が施工の末端まで反映される仕組みになっている。注文住宅だけでなくリフォーム工事にも対応しており、間取り変更や断熱・耐震補強、水回りの刷新まで一括で請け負う。部分的な修繕から全面改修まで、建物の状態や家族構成の変化に応じた工事を設計段階から組み立てている。
「設計と施工が別会社だったときは伝言ゲームのようだったけれど、髙野建築では打ち合わせの翌日に職人さんから直接確認の連絡が来て驚いた」という声が印象に残る。大手ハウスメーカーでは営業・設計・施工がそれぞれ別部門になりがちだが、髙野建築の場合は担当者間の距離が物理的に近い。このスケール感だからこそ成り立つ連携の速さは、規模の小ささを逆手に取った運営スタイルだろう。施主の細かな要望が途中で薄まらずに完成まで届く、という実感を持つ依頼者は少なくないようだ。
自社工房から生まれるオーダー家具と特注建具
髙野建築が所有する自社工房には、木工加工用の機械設備が複数台並んでいる。熟練の職人が手仕事と機械加工を使い分けながら、住まいの寸法や動線に合わせた造作家具を一点ずつ製作している。収納棚やカウンターなど、既製品では対応しきれないサイズや形状のオーダーに応じられるのは、この工房があるからこそ。建具についても特注寸法で仕上げるため、古い住宅のリフォームで生じがちな微妙な隙間やズレを解消できる。
個人的には、家具と建具を同一の工房で手がけているという点が印象的だった。素材の色味や木目の方向を揃えやすくなるため、部屋全体の統一感が自然に生まれる。無垢材や自然素材を積極的に採用しており、経年で色合いが変化していく過程も含めてデザインに組み込んでいるという。工房を見学した施主が「ここで自分の家の一部がつくられていると思うと愛着が湧く」と話していたのも頷ける。
3DCGと半規格住宅で設計の納得度を上げる
平面の図面だけでは把握しにくい天井高や採光の具合を、髙野建築では3DCGによるシミュレーションで事前に確認できる。画面上で素材の質感や家具の配置を試せるため、完成後のイメージとのギャップが起きにくい。ヒアリングを複数回重ねたうえでCGに落とし込む流れを取っており、施主が「思っていたのと違う」と感じるリスクを設計段階で潰していく。頭の中にある漠然とした理想を、目に見える形へ変換する工程に時間をかけている。
半規格住宅という選択肢も用意されている。ベースとなるプランをあらかじめ設定し、そこに施主ごとの要望を加えていく方式で、フルオーダーに比べてコストを抑えやすい。自然素材の採用や手仕事による仕上げは維持したまま、予算の上限が明確になるため資金計画を立てやすいと感じる施主も多いという。「小さくても満足度の高い家をつくりたい」という相談が近年増えているそうだ。
地域材を活かした施工と暮らしに合わせた改修
佐久市周辺で産出される木材を積極的に取り入れ、地域の気候風土に馴染む住まいを手がけている。地元の材木は輸送距離が短いぶん調達コストを圧縮でき、乾燥や加工の履歴も追いやすい。髙野建築では素材の選定から現場への搬入まで自社で管理し、木の反りや含水率を見極めたうえで加工に回す。こうした工程を省略せずに踏むことで、引き渡し後の狂いや割れを最小限に留めている。
キッチンの動線改善や浴室のバリアフリー化など、生活スタイルの変化に応じたリフォーム依頼も継続的に受けている。新築時に髙野建築で家を建てた施主が、十数年後に再び改修を依頼するケースがあるという話を聞いた。建築時の図面や仕様が社内に残っているため、壁の内側の構造を把握した状態で工事に入れる。「前回の担当職人が今回も来てくれた」という声が示すように、人の入れ替わりが少ない工務店ならではの継続性がここにはある。


