無垢材と珪藻土が呼吸する住空間
香川県高松市で三代続く工務店・有限会社吉建は、自然素材を軸にした家づくりを一貫して手がけてきた。無垢材の床や珪藻土の壁を標準的に採用し、化学物質の放散を抑えた室内環境を設計段階から組み立てている。木の香りや足裏に伝わる温度感は、住み始めてから実感が深まる類のもので、引き渡し後に「空気が違う」という声が施主から届くことも珍しくない。年月とともに素材の表情が変わっていく過程そのものを、暮らしの一部として楽しめる住まいを形にしている。
高松市特有の湿度の高い気候を踏まえ、通気層の確保や換気経路の設計にも細かく手を入れている。設備機器に頼りきらず、自然の風と素材の調湿性能を組み合わせて室内環境を整える手法は、光熱費の抑制にもつながる。個人的には、珪藻土の壁に手を当てたときのさらりとした感触が印象的だった。梅雨時でも室内がじめつきにくいという施主の感想は、この設計思想が日常レベルで機能している証拠だろう。
注文住宅からリフォーム・耐震工事まで
有限会社吉建の対応領域は新築の注文住宅にとどまらない。断熱改修や耐震補強、間取り変更を伴う大規模リフォームまで、住まいに関する工事を幅広く引き受けている。設計・施工・完成後の点検までを自社体制で担うため、工程間の情報が途切れず、仕上がりの精度を保ちやすい構造になっている。とくに築年数の経った木造住宅の耐震診断から補強工事への流れは、地元での相談件数が増えている分野だという。
ある施主は、子どもの独立を機に2階の子ども部屋を夫婦の書斎と趣味室に改修した。既存の梁や柱をそのまま活かしつつ、断熱材を入れ替えて冬場の冷え込みを解消したケースで、工事期間は約3週間。住みながらの施工だったが、生活動線を事前に細かく打ち合わせたことで大きな支障はなかったと聞く。こうした「壊さずに活かす」提案は、家に積み重なった時間ごと引き継ぎたい施主にとって現実的な選択肢になっている。
ヒアリングに時間をかける設計プロセス
家づくりの最初の工程として、有限会社吉建はヒアリングに突出した時間を割いている。家族構成や日々の動線、将来的な暮らしの変化まで聞き取り、言葉にしきれない要望を図面に落とし込んでいく。キッチンの高さひとつ、窓の位置ひとつにも施主の生活習慣が反映されるため、打ち合わせの回数に上限は設けていない。実際のサンプルやイメージパースを使って確認を重ねることで、完成後の「思っていたのと違う」を防いでいる。
断熱等級や耐震性能といった数値面の基準はしっかり押さえつつ、過剰なスペックに偏らないバランス設計を志向している点も見逃せない。予算配分についても施主と率直にやり取りし、優先順位を一緒に決めていくスタイルを取る。「最初は漠然としたイメージしかなかったが、打ち合わせを重ねるうちに自分たちの暮らし方が整理できた」と話す施主もいて、設計プロセス自体が家族の価値観を見つめ直す機会になっているようだ。
引き渡し後も途切れない関係性
完成引き渡しを終えたあとも、有限会社吉建との関係は続く。定期点検のほか、建具の調整や設備の不具合といった小さな困りごとにも対応しており、施主ごとに使用素材や施工履歴を記録・管理している。高松市内に拠点を置く地場の工務店だからこそ、連絡から現場確認までの動きが速い。三代にわたる営業の中で、親の代に建てた家を子の代でリフォームするという依頼も実際に発生している。
家族が増えたタイミングでの増築相談や、高齢になった親世帯のバリアフリー改修など、ライフステージの節目ごとに声がかかるケースは少なくないという。住まいの変遷を長期的に見守れる立場にあることが、工事の提案精度にも直結している。「何かあったらまず吉建に電話する」という感覚が施主の間に根づいているのは、完成後のやり取りの積み重ねによるものだろう。


