カーボンニュートラルへの道を、廃材から切り拓く
台風や集中豪雨で山間部から流れ出た木々がダムに滞留し、水質や生態系に影響を及ぼしている。この問題に着目したのが株式会社HATSUTORIだ。回収した流木を独自の製炭炉で炭化処理し、土壌改良や農業用途に対応した純国産バイオ炭として製造・販売している。廃材に由来する炭素を土壌の中に長期固定することは、温室効果ガス削減の観点からカーボンニュートラルへの具体的な手段として評価されている。
バイオ炭は燃料ではなく資源としての炭であり、使用後も環境中で安定した状態を長く保ち続ける特性がある。農業現場での導入者からは「土の保水性が上がり、肥料の効きが変わった気がする」という感想が寄せられているという。炭質や粒度の調整にも対応しており、農地の状態に合わせた仕様での提供が行われている。
製炭炉の設計思想と技術の核心
流木や林地残材は含水率も形状も一定ではなく、安定した炭化処理を施すには素材に適応した炉の構造と精密な制御が不可欠になる。株式会社HATSUTORIが自社開発する製炭炉は、空気の流れと熱伝導を細部まで設計し、炭素固定率を最大化する構造を採用している。温度・酸素の調整が自在に行えるため、素材の状態に関わらず安定した炭質を確保できる。操作性と安全性にも配慮した設計で、小規模農家から大型施設まで導入の間口は広い。
製炭炉は販売品としても取り扱っており、地域の森林組合や農業法人などが自前での炭化体制を整える際の選択肢となっている。設立2023年、拠点は宮崎市別府町。創業から日が浅いながらも、技術開発と販売の両面で着実に歩みを進めている。
農業現場との対話が製品を磨く
土壌の状態は地域・作物・気候によって千差万別で、バイオ炭の効果を引き出すには現場ごとの調整が欠かせない。株式会社HATSUTORIでは生産者と直接やり取りを行い、粒度・使用量・施用タイミングなど現場の実情に合わせた提案を続けている。問い合わせは24時間受付対応で、製品の導入検討から使い方の疑問まで、窓口を広く開いている。農業における土壌改良は即効性のある施策ではないため、継続的なフォローを前提とした関係構築を重視している。
正直なところ、農家一軒一軒の声を事業に反映しようとする姿勢は、規模の大きな企業では失われがちな部分だと感じた。「どう使えばいいか最初は不安だったが、丁寧に説明してもらえた」という導入者の声が、取り組みの実態をよく示している。
廃棄という選択肢をなくす、資源循環の構想
山林の整備で発生する伐採材や、ダムに流れ込んだ流木は、処分先が決まらないまま放置されることが多い。その大半が焼却か埋め立てに回されるが、その過程では新たな二酸化炭素が発生し、処理費用も発生する。株式会社HATSUTORIが構築しようとしているのは、廃材を製炭工程に取り込み、資源として循環させる仕組みだ。廃棄が農業資源へと転換される流れは、地域の森林整備コスト削減と農業生産性の向上を同時に実現する可能性を持っている。
代表・服部かおる氏は「日本の活性化と持続可能な社会の実現を目指す」という方針を明確に示している。資源循環・雇用創出・SDGs対応という複数の社会課題をひとつの製造プロセスで束ねるアプローチが、株式会社HATSUTORIの事業を単純な製品販売と一線画している。


